2019.01.23
インフルエンザは呼吸するだけで感染する?
脳科学的栄養学 No.28
インフルエンザは呼吸するだけで感染する?
日本や米国でもインフルエンザの大流行が続いていますが、さらに注意が必要な論文が報告されました。
これまで、インフルエンザの主な感染経路は
①感染者のくしゃみや咳で飛び散ったウイルスを含むしぶきを吸い込む「飛沫感染」か、
②ウイルスが付着したものを触る「接触感染」
のいずれかだと考えられていました。
しかし、今回、
感染者が呼吸するだけでウイルスが周りに拡散し、同じ部屋にいる人に感染する「空気感染」も予想以上に起こりやすい
ことが新たな研究で示めされています。
この研究を実施したのは米メリーランド大学環境衛生学のDonald Milton教授ら。
教授らは今回、インフルエンザ患者142人に協力してもらい、発症から1~3日目に
(1)いつも通り呼吸しているとき
(2)話しているとき
(3)咳をしたとき
(4)くしゃみをしたとき
の呼気サンプル(計218サンプル)を集め、分析。
リアルタイムで遺伝子検査を行った結果、咳が出ていない状態で採取された呼気サンプル(23サンプル)の48%(11サンプル)でインフルエンザウイルスが検出された。
また、ウイルス培養実験で、感染力を有するインフルエンザウイルスの量を測定したところ、咳が出ていない状態で採取された11の呼気サンプルのうち8サンプルで感染力のあるウイルスが確認されたとのこと。
この結果は、
咳が出なくても、インフルエンザウイルスの含まれるエアロゾル(空気中に浮遊する粒子)が発生しうる
ことを示しています。
さらに、くしゃみが数回出た場合も呼気サンプル中のウイルス量に変化はなかったことから、くしゃみによる影響もこれまで考えられていたほど大きくはないことが示されたという。
今回の研究に関する同大学のプレスリリースで「咳やくしゃみをしなくても、インフルエンザ患者が呼吸するだけで周囲の空気にウイルスが放出されることが分かった。
したがって、インフルエンザに感染した人が職場に現れた場合には、周囲への感染を防ぐため職場にとどまらせず、すぐに帰宅してもらうべきだ」と注意を喚起しています。
また、「この研究結果を企業や学校、地下鉄車内の換気システムの改善などを通じたインフルエンザ予防策の向上に生かしてほしい」とも述べています。
これまで、部屋を清潔にし、手洗いを頻繁にし、外出時はマスクをしたり、咳をしている人に近づかないようにするといった対策は、インフルエンザの感染リスクを低下させる上で一定の効果があることは認められてきたところです。
しかし、患者が呼吸するだけでインフルエンザウイルスが飛び散ってしまうというのであれば、これらの対策だけでは十分ではないということになりますね。
まずはこの時期、自分がインフルエンザウイルスの飛散源にならないよう心掛けるしかないということになります。
原著論文はこちら
Yan J, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2018 Jan 30;115.
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