これまでの肺炎と、新型コロナウィルスによる肺炎とはどこが違うの?② | 薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

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薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

2020.03.12

これまでの肺炎と、新型コロナウィルスによる肺炎とはどこが違うの?②



科学的栄養学No.96

これまでの肺炎と、新型コロナウィルスによる肺炎とはどこが違うの?②

 

 

そもそもウイルス性肺炎とは、いうまでもなく、「ウイルス性肺炎」で、いわゆるこれまでの肺炎の多くは、細菌性肺炎です。

 

ウィルス性肺炎は細菌性比べると、診断や治療が難しいとされています。

 

そもそも、ウィルス性と細菌性肺炎は、肺での炎症が起きる部位が違います。

 

細菌性肺炎は、細菌(肺炎球菌、黄色ブドウ球菌など)が、気道の末端にある「肺胞」の中で増殖し、炎症を起こします。
 

症状としては高熱と、咳、膿ともいえる痰がたくさん出てきます。

ですからこのような、肺胞で炎症が起きる肺炎のことを、
「肺胞性肺炎」といいます。

 

 一方、今回の新型コロナウイルスや、インフルエンザウイルス、RSウイルス、麻疹ウイルスなどによって、肺胞壁やその周辺の「間質」で炎症が起きるのがウイルス性肺炎で、悪化すると、肺胞の組織が線維化して硬化していきます。

このような間質で炎症が起きる肺炎を
「間質性肺炎」とよび、カビなどのアレルギーが原因でも起こります。

 

細菌が原因の肺胞性肺炎では、肺胞の中に炎症物質が充満しているので、レントゲンなどの画像診断では、濃い影が写ります。

しかし、ウイルスが原因の間質性肺炎の画像診断では、薄いぼんやりとした影になります。

 

さらに発生件数そのものが多くないのでウィルス性肺炎の診断は難しいのです。

 

インフルエンザになったときには肺炎を併発する率は高齢者ほど高くなります。

そのほとんどがウイルス性ではなく細菌性であることが多く、それは、高齢者ではインフルエンザなどで、免疫力が落ちたところに、肺炎球菌などに感染して肺炎が起きるのがほとんどです。

 

 治療薬に関しては、細菌性肺炎が疑われる場合は、抗菌薬(抗生物質)が処方され、服薬することで症状は改善されていきます。

 

しかし、ウイルス性肺炎は、その原因となっているウイルスを退治する抗ウイルス薬がそもそもありませんので(一部のウィルスのみ)、現状では対処療法のみとなります。

 

さらに、ウイルス性肺炎が、細菌性肺炎より、診断や治療が難しい理由として、新型コロナウイルスの感染力が想定よりも強いことにあります。

 

感染力が強いのは、症状のみられない感染者からもウイルスが排出されていることと関係しているかもしれないと専門家はみています(*2)。また、ウイルスの生存期間が比較的長いことを示唆する報告もあります(*3)

 

*2 新型コロナ、無症状の感染者からも発症者並みのウイルスを検出
*3 https://doi.org/10.1016/j.jhin.2020.01.022

 

これまで、連日報道されてきたように検査体制が追い付かず、簡易検査キットもまだできていないなどで多くの人が不安を抱いてきたところですが、ここにきて、検査や治療薬について、ウイルスを特定するためのPCR検査」が保険適用されることとなり、一日の処理件数も上がってきましたので、不安もすこしは解消される可能性が出てきました。

 

さらに、新型インフルエンザ対策特別措置法改正案も今週中には制定される見通しになってきました(3月10日現在)
 

治療薬の開発が急がれますが、新薬開発には時間がかかります。

したがって、既存の薬を適応外使用する検討が進められており、新型コロナウイルス感染症にも一定の効果が期待される可能性が示唆されてきました。

 

 WHOでは、ロピナビルリトナビルといった抗HIV薬や、抗ウイルス薬のレムデシビルの試験を始めており、まもなく結果が出るようです。日本でも、報道されているように新型インフルエンザ薬「アビガン」(一般名ファビピラビル)などの試験が始まっています。新型コロナウイルス感染症の治療薬として使えるようになることが期待されています。

 

こうした状況の中で「予防原則」を最優先し、いま私たちができる予防策についてまとめてみました。

 

新型コロナウイルスの「飛沫感染」「接触感染」が主な感染ルートです。

 

飛沫感染とは、感染している人のくしゃみ・咳によって空気中にウイルスなどの病原体が「飛沫」として排出され、それを吸い込むことによって起こる感染。だいたい1~2メートルの距離で感染するとされてます。

 

接触感染とは感染ウイルスが含まれた鼻汁、唾液などに直接触れることで手にウイルスがつき、その手で口や鼻を触ることで感染します。

 

予防対策としては、従来のインフルエンザと同じで、「徹底した手洗い」が最も重要になります。
 

外出先から戻ったとき、トイレに行った後、食事の前などには必ず石けんで手を洗うようにしましょう。
 

軽く水で流す程度の手洗いではなく、TVなどで報道されているように、石鹸を使って30秒以上かけてしっかり洗うことが大切。

ノロウイルスと違って、新型コロナは
アルコールでも消毒できるので、活用しましょう。

 

マスクについては新型コロナウイルスの感染を防ぐことはできせんが、喉の乾燥が防ぐなど間接的な予防効果は期待できます。喉が乾燥すると、気道の防御システム力が弱まりますので、喉の乾燥を防ぐことは意味があります。

 

また、マスクできちんと鼻や口を覆えば、不必要に指などで鼻や口に触れてしまうことを避けられるので、接触感染の予防は防げます。

ただし、正しい使いかたを守ることです。

 

サイズが合わないマスクでは、隙間からウイルスの侵入しやすくなります。

また、つけ外しするときは、ゴム紐の部分を持って行う。特に外すときにフィルター部分を触ってしまうと、指にウイルスがつく可能性があるので注意が必要だと報道されています。

 

自分に感染症の疑いがあるときは、いうまでもなくマスク着用です。

 

感染が広まるのを防ぐには、そもそも人が集まる場所に行かないこと。

風邪のような症状があれば、感染を広げないために外出を控え、できれば仕事も休んでほしいところ。

 

私も、自らが感染者とならないよう、2月から室内での行事や多くの人が集まるライブや、観劇、この秋出発予定だったクルージングなどすべての予約を思い切ってキャンセルしたところです。

 

 これからの季節は追い打ちをかけるようにスギ花粉症が本格化するのも問題です。新型コロナウイルスは鼻の中にもいるので、くしゃみで飛沫感染が広がることが考えられます。

 

また、花粉症の人は気になって鼻などを指でつい触ってしまいがちですが、接触感染が増えやすくなるのでこれも注意が必要です。花粉症に悩まされている人は、今年は必ず薬をのんで症状を抑えるようにしましょう。

 

 また、新型コロナウイルスは、飛沫よりも粒子が小さい「エアロゾル」による感染も取りざたされています。
 

新型コロナウイルスで可能性が指摘された「エアロゾル感染」とは?
 

エアロゾル感染の可能性がある場合は部屋の換気も大切です。
 

積極的な部屋の換気につとめたり、空気清浄機を使うのもいいでしょう。

 

原則、0.1マイクロメートル(0.0001mm)の粒子でも吸着する空気清浄機であれば、インフルエンザやコロナウイルスでも吸着できるといわれています。

 

新型コロナウイルスは未知の病原体で、不安に思う人は多いのですが、新型コロナウイルス感染症で人の命を奪うのは肺炎が原因です。

ですから、そもそも肺炎がどのような病気か、そして新型コロナウイルスによる症状が、これまでとどう違うのかについて解説してきました。

 

肺炎はもともと日本人には身近な怖い病気ですが、新型コロナウイルスによる肺炎を「正しく恐れる」ことで、乗り越えていくことができれば、将来の肺炎対策への新たな道が切り開かれていくのでは、そのことを祈るばかりです。

 

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