懸賞作文「私の出産~母から子へ伝えたい言葉~」 金賞「誓い」 | ぐるっとママの社長のブログ

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2022.10.23

懸賞作文「私の出産~母から子へ伝えたい言葉~」 金賞「誓い」



金賞 

埼玉県 ひかるママさん 「誓い」


『ママはこれからもあなたを愛してく。パパの分までじゃなく、パパと一緒に。』

 



ねえ、ひかる。
今日はあなたにパパのことを伝えようと思う。
あなたが生まれる前にこの世を去ったパパのことを。

パパは予定日の三週間前、帰宅中の薬局で倒れ、そのまま搬送先の病院で亡くなった。
病名は急性心筋梗塞。
当時警察から渡された遺留品には赤ちゃん用のガラガラや紙オムツの他にカフェインレスのコーヒーがあった。
いかにも出産を待ちわびるあの人らしい買いものだった。

思えば妊娠がわかった日もそうだった。
喜びのあまり会社帰りに出産育児の本を買ってきて、早くも名前を考え始めた。
「何だかあなたが出産するみたいね」
私がクスッと笑うと「出産も育児もふたりでするもんだからな」と意気込んだ。

検診の日もそうだった。
わざわざ休みをとり、朝から神社にお参りに行った。
「こんなにいらないよ」
その日は四つ目の安産守。
私が呆れていると「いいんだ」と言いながら「今日は帰ったらタコ飯にするぞ」と言った。
タコは多幸。
スクリーニング検査の日には伊予柑を食べろと言われ、血液検査の時はおむすびを作ってくれた。
伊予柑はいい予感だし、おむすびは、よい結果を結びつけるってことらしい。
笑っちゃうでしょ。
でもこれがパパの愛情なの。

しかし私たちがあなたを授かるまでの道のりは決して平坦なものではなかった。
十年にわたる不妊治療。
心拍が確認できずに流れた日もあったし、心拍が止まっていた日も何度もあった。
それでも諦めずに続けられたのは「僕たちなら大丈夫」というパパの言葉があったから。
妊娠してからもパパは毎日あなたに話しかけた。
子守唄を聞かせることもあったし、そのままうたた寝しちゃうこともあった。

だけどパパが亡くなって、ショックのあまり何もできなくなった。
毎日毎日泣き明かし、いっそこのまま赤ちゃんに戻りたいとさえ思った。
婦人科の入口をお腹の大きな妊婦さんが入っていく。
パートナーを亡くした人も、いる人も、みんな同じ入り口を通る。
その虚しさといったら、ない。

だけどある日の夕方、自宅に真っ赤なバラが届いた。
差出人はパパだった。
まさかこの日のためにわざわざ準備していたなんて。
『ゆみへ  もうすぐ出産だね。これからは俺がふたりを全力で守っていくよ。大丈夫。これからも愛してます』
まるで天国からのプレゼント。

何だか私たちを想うパパの愛が沁みて仕方なかった。
もしパパがいたらあなたはもっと幸せになれたかもしれない。
男同士のふれあいだって、きっと、あった。
だけどパパはこの先も私たちの心にいて、ずっと愛を注ぎ続けてくれる。
そう思えたら急に元気が出た。

二日後パパの遺影が見守る中あなたは生まれた。
お釈迦様のように垂れた目元。
何だかパパの里帰りみたいで胸が熱くなった。
だけど自然と涙は消え、勇気がわいた。
私たちの心にはパパがいる。
そう思える強さをパパがくれたから。

ねえ、ひかる。
もし今さみしい思いをさせてたらごめんね。
でもね、ひとつだけ言わせてほしい。
ママはこれからもずっとあなたを愛していくよ。
パパの分までじゃなくて、パパと一緒に、ね。
それだけは確か。
 

埼玉県 ひかるママさん
題名:誓い
子どもへ伝えたい言葉:「ママはこれからもあなたを愛してく。パパの分までじゃなく、パパと一緒に。」

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