2021.07.14
オンライン授業に子どもが集中するために必要なこと
オンライン授業に 子どもが集中するために必要なこと 東京では残念ながら新型コロナウイルス感染拡大により四度目の緊急事態宣言に入ってしまいました。 オリンピック史上初めての無観客開催の競技も多くなるようですし、この先もオンラインでのコミュニケーションは欠かせない時代に入っていますね。 さて、今回はオンライン授業に子どもが集中するために必要なことをテーマに書かせていただきます。 これは子どもに限ったことではないので大人にも当てはまるテーマですね。 でも子どもの方が集中力が切れやすかったり、大人のように我慢が出来ない子も多いですから、どうしても子どもが集中してやっているかどうか、さぼったりしていないかが気になってしまうわけです。でもそこで親が干渉しすぎたり、怒ったりしすぎてしまうと台無しです。 子どもはオンラインの先にある内容よりも、親のことや周りの環境が気になってしまって肝心な中身が入ってこなくなる危険性もあるでしょう。 私は普段、企業研修の講師としてオンラインで研修をリードさせていただくだけでなく、キリスト教会でユースと呼ばれる中高生を対象にした礼拝で毎週オンラインでメッセージをしています。 担当してまもなく丸1年になりますが、実は最初は本当にどうしていいか分からないような状態でした。 わずか数名の集まりなのですが、時間に遅れてきたり、連絡がないまま欠席だったり、リアルに集まっていた時よりも集中して礼拝を進めるのが余計に難しくなっていました。 中高生になると、小学生よりは集中力が続くのですが、多感な時期でもあり、他にも面白いことはいっぱいあるので「毎週礼拝に参加したいな」と思ってもらうところから考えなくてはなりません。礼拝は約90分でやることが多く普段の授業よりも圧倒的に長い時間です。 そこで聖書に書いてある言葉を必ず扱うのですが、それも必ずしも面白くて分かりやすい内容ばかりではなく、むしろ難解で分かりづらい言葉を扱う時もあります。 それでも一緒にユースを担当してくれるSさんと工夫しながら改善を繰り返し、今では毎週楽しく、皆も喜んで参加してくれるようになりました。心理学的にもポイントをまとめていきながら、皆さんの子育てにもお役に立てていただければと思います。 【ポイント①安心感】 まずオンラインでの顔を合わせたコミュニケーションですが、子どもによってはそれ自体に苦手を持つ子もいたようです。 LINEで一対一でビデオをオンにして話すようなことはあっても、一体複数でオンラインで参加型のものは初めてで「嫌だな」と思っていた子もいました。 そこでいつも最初の時間はいかに安心感を持ってもらうかを意識しながら始めています。 だいたいまずは「先週はどうだった?」というオープンな質問から始めるのですが、最初のころはそこでポジティブな話が出てくることも稀でした。 よくある答えは「普通でした。」です(苦笑)。 その答えだと何も分からないのですが、それでも一切の否定はしません。「普通かー、それは良かったね。 大人になってくると普通であることがどれだけ有難いことか良くわかってくるよ。」なんて言いながら、次の子にも聞いていきます。 そしてSさんと私も同じく先週の体験をシェアします。 その時に気を付けていることは「等身大」「正直」ということです。 もちろん良かったことや出来たことなどもシェアするのですが、例えばちょっと落ち込んでしまったりしたこととか、嫌だったことなども話します。 そうすると自分から話はしなかった子でも「分かる~。」とか「先生でもそういうことあるんですね。」なんていう言葉が子どもたちから出てきたりします。 そういう言葉を聞いて感じるのは、学校や様々な場面において子どもたちの中に「良いことを言わなければいけない」「立派なコメントをしなければいけない」「ネガティブなことを言ってはいけない」なども意識が出来てしまっていて、自分の本音をいうことに制限をかけて生きてしまっている子が多いということです。 特に公の場や人がたくさんいる場所などではその傾向が強いようです。 私もあえてネガティブな意見を引き出そうとは一切しないのですが、無理にポジティブな考え方を持たせることもしません。 それよりも子どもたちがまず本音で安心して話せる関係づくりと環境づくりを意識しています。 そうすることで参加に対するハードルが下がり、繰り返していくと子どもたちから困っていることや悩んでいることを率先して話してくれるようになってくるの実感しています。 そうすると初めて参加した子どもも、ほかの子どもたちがネガティブな思いも正直に話していたり、しかも笑いながら話している姿なんかを見て、なにか他の場所とは違う安心感や自由さを感じてくれるようです。 これは前回のコラムで書いた欲求を満たすというテーマを見ていただければ分かりやすいのですが、「生存の欲求」「自由の欲求」を満たしやすい環境づくりをしています。 【ポイント②アイスブレイク】 オープンな会話からはじまって毎回和やかな雰囲気になるのですが、それでもアイスブレイクは毎回時間をとってやっています。 今のユースメンバーには中学校3年生や、高校3年生の子も多いため、将来の仕事や夢についてゲストを呼んでその人の体験を話してもらうことも多くあります。 中高生の多感な時期には、一人でも初対面の人がいると緊張してしまう子もいるので、アイスブレイクでゲームをしながら一緒に楽しんだり、その人の性格を知ることで話を聞きやすくするのも狙いです。 アイスブレイクはSさんがいろんなことを考えて準備をしてくれるのですが、クイズやイラストを描くゲームや参加者に対する質問ゲームなど気楽に楽しみながらやれるものばかりです。 この時間があるために、先週勉強が大変だった時も、テストの点数が悪かったりして落ち込んでいるときでも、笑いながら一気に心の距離をまた縮めることが出来ています。 そして実はこれは子どもから出てきた意見でした。 それまで私は子どもたちが知らない大人の人が話す事に対してそんなに緊張するんだということが分からずにゲストを呼んで話してもらうことがあったので、この意見にとてもハッとしました。 アイスブレイクの効果は絶大で、繰り返していけば少しずつお互いの趣味や好きなことも理解できるようになっていて、人間関係が毎回深くなっていくのを感じます。 これは「愛・所属の欲求」「楽しみの欲求」を満たすことを意識した環境づくりです。ウェブで出来るアイスブレイクなども調べてみると活用できるものもたくさんありますので試してみてください。 【ポイント③内容の理解を助ける】 アイスブレイクが終わると当日のメインセッションに入っていきます。 ここまでで十分子どもたちの心の壁はなくなっていますので、話に集中しやすい環境が出来ていることになります。 なので少し難しい聖書の学びや大人の体験談も期待をもって聞いてくれる姿勢が出来ています。 ただ、それでも中高生がオンラインで難しい話を聞けるのはだいたい20分ぐらいが限度のように感じています。 そして話が終わった後には、必ず一人ずつ「どう感じたか?」を自由に発言してもらうようにしています。ここが90分の中でも最も大事な時間といっても過言ではありません。 なぜならこちらが「伝えたいこと」が「伝わっている」とは限らないためです。 具体的に言えば、こちらが伝えたいことが「神様は私たち一人一人を特別な存在として造ってくださっているんだよ」だとしても、子どもたちが「自分は○○さんのようには出来ないと思った」という他人と比較する思考習慣があって自分の価値を下げてしまう受け取り方をしている可能性もあるわけです。 でもこの発言自体が出ることは良いことです。なぜなら冒頭の「ネガティブな意見でも言ってもいいんだ」という安全安心な環境が出来ているからこそ出てくる発言だからです。 なので発言してくれたことにまず感謝を伝えます。 そのうえでもう一度こちらが「伝えたいこと」を伝え、健全な価値観を持てるように手助けします。 基本的には子どもたちが社会で生きていくために必要な自己肯定感や愛をはぐくめるようにする内容を意識してメッセージの準備や環境づくりをしています。 ここではいろんな欲求を満たすことが多いですが、特に多いのは「力の欲求」を満たすことだと思います。 これは「価値の欲求」と呼ばれることもあり、自分自分の価値を認識することで人はやる気になったり前向きになったりすることが出来ます。 【ポイント④当事者意識】 最後に子どもたちが何かを「受ける側」で終わることなく一緒に「つくる側」に回ってもらうことを意識しています。 そのために最後のお祈りや、欠席した友だちのためのお祈りなどは子どもたちにお願いしています。 そうすることで自分たちのための時間なんだということが認識することができて、徐々に自分だけではなく周りの子どもたちのことも気にすることができるようになってきます。 子どもたちがお互いのために心をこめて祈っているところを見ると、むしろ私たち大人の方が感動して学ばせていただくことも多いです。 普段から私たち大人も、「この時間はみんなのためのもの。みんなが主役の時間」というように意識しており、そうはいっても最初は義務感や仕方なくという感じが強かったですが、これも子どもたちを信じて言い続けてきたために徐々に浸透してきたのが実際のところだと思います。 さて、ここまでお読みいただいていかがでしたでしょうか?今回は教会での礼拝ということで少し特殊な事例でしたが、学校の授業でも基本的にはこの「欲求を満たす」という観点から集中できる環境を考えてあげることをお勧めします。 学校の授業がいざはじまってしまうと親にはできることはあまり無くなってしまうかも知れません。 そうした場合は授業の「前後の環境づくり」が重要になります。大人でもオンラインで何かを見続けるには集中力がいりますから、例えば今回のことを活かしてはじまる前は親子でシェアする時間を取ったり、終わった後は感想をアウトプットさせてあげるなど工夫をしてみてください。 集中力をあげる工夫だけでなく、集中力を阻害する要因を取り除いてあげることも大切です。安心して話せる親子関係があれば、集中できない原因も必ず見つかることと思います。 今回はコミュニケーションというテーマで書かせていただきましたが、それ以前に子どもの部屋や学習机の環境と整えたり、本人の高い欲求に合わせて変えてあげるだけでも効果は現れてくるでしょう。