たんぱく尿と食習慣の関係 | 薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

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薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

2021.04.22

たんぱく尿と食習慣の関係



科学的栄養学No.152

◇たんぱく尿と食習慣の関係

「朝食抜き」と「遅い夕食」がタンパク尿出現に影響?

 

朝食を抜くあるいは遅い時間に夕食をとるという食習慣のかたは要注意です。たんぱく尿の出現リスクを高める可能性があるとの報告です。

 

健康診断で、尿たんぱくが陽性(たんぱく尿)だと、腎臓の病気が疑われます。
 

腎臓病は無症状である場合が多いため、たんぱく尿は腎臓の病気を見つけ出すための重要なサインです。

ですから放置しておくと、
慢性腎臓病に進行する可能性が高くなります。

 

 慢性腎臓病から末期腎不全になると透析治療や腎移植が必要になるほか、総死亡(あらゆる原因による死亡)や心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中など)による死亡のリスク上昇にも関係することが分かっています。

 

慢性腎臓病の主な原因は、糖尿病、高血圧、肥満ですが、それらの発生には不健康な食習慣が関係しています。

 

例えば、日常的な朝食抜きや遅い夕食は、肥満リスクを高めることが指摘されています。

 

今回、金沢大学などの研究者たちが、慢性腎臓病の発症の手前で出現するたんぱく尿と不健康な食習慣の関係について調べてその結果が報告されました。

 

調査は石川県金沢市で、19982014年に年1回の健康診断を受けていた40歳以上の一般人を対象に行われました。
 

1回の健康診断の際に、質問票を用いて、不健康な食習慣、飲酒習慣、喫煙習慣、降圧薬の使用、血糖降下薬の使用に関する情報を収集し、BMI1)とウエスト/ヒップ比(2)を測定。不健康な食習慣に関する調査では、遅い夕食(週に3回以上、夕食が就寝前2時間以内になる)、夕食後の間食(週に3回以上)、朝食抜き(週に3回以上)について、「はい」「いいえ」から回答を選択し、早食いについては、同年代の人と比較して「早い」「同じ」「遅い」から選択するよう依頼しました。

 

1 BMI:体格指数=体重(kg)÷〔身長(m)×身長(m)〕 日本肥満学会の分類では25以上が肥満。

2 ウエスト/ヒップ比=ウエスト周囲径(cm)÷ヒップ周囲径(cm) 数値が大きいと生活習慣病のリスクの高い腹部肥満(内臓脂肪型肥満)と判断される

 

 健康診断後1年を超えて追跡できた26764人(平均年齢68歳、44%が男性、平均BMI22.8、平均追跡期間3.4年)を分析対象にしました。

 

 不健康な食習慣の中で最も多かったのは早食い(29%)で、続いて、遅い夕食(19%)、夕食後の間食(16%)、朝食抜き(9%)となりました。

 

まず、健康診断時のBMIおよびウエスト/ヒップ比と不健康な食習慣の関係を調べたところ、不健康な食習慣を実践していた人の方が、そうでない人に比べ、BMIもウエスト/ヒップ比も統計学的に有意に大きいことが明らかになりました。

唯一の例外は、朝食を抜く習慣と
BMIの関係で、朝食をしばしば抜く人としっかり食べる人のBMIには有意な差は見られませんでした。

 

 また、追跡期間中のBMIの変化とウエスト/ヒップ比の変化には、不健康な食習慣の有無はほぼ影響していませんでした。

 

 追跡期間中に、2844人(10.6%)にたんぱく尿が出現しました。発生率は1000-年あたり32.7でした。

4つの不健康な食習慣のうち、たんぱく尿出現リスクの上昇と関係していたのは、「遅い夕食」と「朝食抜き」でした。出現リスクはそれぞれ12%、15%上昇していました(図表参照)。

 

「朝食抜き」と「遅い夕食」がある人のたんぱく尿出現リスクの上昇は、年齢、性別、BMIにかかわらず、広く認められました。

 

この研究結果からは、不健康な食習慣とたんぱく尿出現の直接的な因果関係は明確にできませんが、不健康な食習慣を改善すれば、腎臓をいたわることができる可能性につながるといえます。

 

原著論文

Tokumaru T, et al. Nutrients. 2020;12(9):2511. Published online 19 August 2020.

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