血液中のビタミンD濃度が高い人はがんになりにくい ただしとりすぎると高カルシウム血症や腎障害の危険も | 薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

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薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

2019.05.24

血液中のビタミンD濃度が高い人はがんになりにくい ただしとりすぎると高カルシウム血症や腎障害の危険も


科学的栄養学 No.55

血液中のビタミンD濃度が高い人はがんになりにくい
ただしとりすぎると高カルシウム血症や腎障害の危険も



日本人約3万4000人のデータを分析した研究結果から、血液中のビタミンDの濃度が高い人は、がんを発症するリスクが低いことが、明らかになりました。

ビタミンDは骨の健康の維持に不可欠な栄養素ですが、近年、ビタミンDが骨の健康維持以外に、いくつかの慢性疾患のリスクを低減する可能性を示す報告が続いており、動物実験などではがん予防に有効である可能性も示されていました。

 今回、国立がん研究センターの研究者たちは、日本人を対象に、血液中のビタミンD濃度とがんのリスクの関係を調べました。

食物から摂取したビタミンDと、紫外線を浴びることにより体内で生成されたビタミンDの大部分は、血液中を長期間循環します。

したがって、これを測定すれば、ビタミンDの過不足を知ることができます。

 対象となったのは、多目的コホート研究「JPHCスタディ」に参加した、東北から沖縄までの9つの保健所管内に住む40~69歳の人々です。

1990年または1993年の時点で、がんとの関係が示されている要因(年齢、性別、喫煙、飲酒、身体活動、がん家族歴、糖尿病の既往、BMIなど)に関する情報が得られており、同時に採血を受けていた3万3736人を、2009年12月31日まで追跡して、登録後のがん診断の有無を調べました。

おおよそ16年の追跡で、3734人ががんと診断されていました。

メラノーマ以外の皮膚がん患者を除外し、データに不足があった患者や血液標本の量が不十分だった患者などを除いた3301人を分析対象にしました。

 また、採血の時点で選出した4456人のうち、がんと診断されたグループと同様の条件を満たした4044人を対照群としました。

血中ビタミンD濃度は季節によって変動するため、採血時期を考慮したうえで、分析対象になった人々を、値が最も低い人から最も高い人まで並べて4つのグループに分け、血中ビタミンD濃度が最も低いグループと比較した、それ以外の3つのグループのがんのリスクを推定しました。

その結果、血中ビタミンD濃度は、がん全体のリスクと逆相関関係を示しました。

血中濃度が最も低かったグループと比較すると、2番目に低かったグループのがんリスクは19%低く、2番目に高かったグループでは25%低く、最も高かったグループでは22%低くなっていました。

 ビタミンD濃度が最も高かったグループのリスクが、2番目に高かったグループより低くならなかったことは、ビタミンD濃度が一定レベルを超えると、利益が頭打ちになる可能性を示唆します。

 臓器別では、胃がん、大腸がん、結腸がん、肝臓がん、肺がん、前立腺がん、乳がんのうち、肝臓がんリスクとビタミンD濃度の間に逆相関関係が見られました。

血中濃度が最も低かったグループと比較すると、2番目に低かったグループではリスクは30%低く、2番目に高かったグループでは35%低く、最も高かったグループでは55%低くなっていました。

 得られた結果は、ビタミンDにはがん予防効果があるという仮説を支持しました。

対象となった人々の、サプリメントを含むビタミンD摂取の状況や、日光に当たっていた時間は不明です。

ただし、ビタミンDサプリメントを使用していた人を除外した集団を対象に分析しても、結果は上記と同様でした。

 ビタミンDの過剰摂取は高カルシウム血症や腎障害を引き起こすことから、安易にサプリメントに頼らず、健康的な食事を取り、適度に日光を浴びるほうが、利益は大きくなると考えられます。
 

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