【奨励賞】溝渕淑子さん「「愛してる」のはじまり」 | 第1回ぐるっとママ懸賞作文

「私の出産」~母から子へ伝えたい言葉~

第1回ぐるっとママ懸賞作文

【奨励賞】溝渕淑子さん「「愛してる」のはじまり」

『愛してるよ。どんなときも、あなたを理解・尊重・応援するから、自分らしく人生を思いっきり楽しんでね。』


愛してるよ。大好きだよ。
あなたにそう語りかけない日はない。
愛してると言える自分になれたことは、あなたが産まれて最初にもらったギフト。

愛って、深くて重みのある言葉だから、それまで口にしたことがなかった。言葉だけ上滑りしてしまいそうで。

あの日、産まれたばかりのふにゃふにゃのあなたを抱き寄せたとき、愛おしさで胸がいっぱいになった。
産まれてきてくれてありがとう。待ってたよ。この世界へようこそ。よくがんばったね。
いろんな想いがあふれて、愛してるって言葉が自然と出てきた。

愛してるよ。どんなときも、どんなあなたでも。
それをあなたに伝える手紙であり、私自身が愛に立ち返る原点が、この作文。

あのね、あなたは私たち夫婦が心から願って望んで授かった命だよ。不妊治療を重ねて、辛く悲しい出来事を乗り越えて、あなたがお腹に宿ったとき、本当に嬉しかった。
お母さんはお父さんと出会って、恋人になって夫婦になって、人生がすごく楽しくなったんだ。子どもがいたらもっと楽しいだろうな。子どもと一緒に家族の思い出をたくさんつくっていきたい。そう思って、あなたが来てくれるのを待ち望んでいたの。

10月8日の妊婦検診で、お股をぱかーんと開いて、僕は男の子だよって早めに教えてくれたね。
お父さんなんて言ったと思う?「男の子ならスパルタで大丈夫だね!」だって。お父さんと一緒に身体をたくさん動かそうね。

12月4日、はじめて胎動を感じた日。
わー!動いた!という興奮のあとに訪れたのは、あぁ本当にここにいるんだというあたたかな実感。
それからは何度もポコポコと力強く元気に動いてくれたね。あなたとお話ししてるみたいで嬉しくて、気づけばいつもお腹をさすってた。

そして迎えた4月7日。
出産の喜びを思う存分に感じたくて、無痛分娩を選んだ。麻酔で痛みは和らいでいても陣痛の波が強くなっていくのはわかった。

いきみ始めてからは、お父さんがずっと手を握って、いける!いいよ!その調子だよ!と応援してくれた。
飲み物を渡してくれたり、頭を冷やしてくれたり、一緒にずっとがんばってくれた。心強かったなあ。

子宮口が全開になってからが大変だったね。出ていきたいのに狭いよー!通れないよー!って思ってたかな。何度も何度もいきんで、その度にお父さんが励ましてくれて、1時間が経った頃。

頭見えてるよ!もう一息だよ!
そう言って助産師さんが、手鏡であなたの頭を見せてくれた。手を伸ばして、そっと触らせてくれた。
ああ、たしかにここにいる。もう手が届くところまで来てるんだ。そう思うと不思議と力がわいてきた。

陣痛の波に合わせて、あなたの産まれ出てこようとする力を信じて、力を振り絞っていきんだ。
お父さんがずっと寄り添ってくれて、助産師さんが3人がかりでお腹を押して、お医者さんが吸引してくれて。
たくさんの人があなたとお母さんを後押ししてくれて、15:37、あなたはこの世界に産まれ出てきた。

へその緒のつながったままのあなたを、自分の手で迎えにいって、そっと胸に抱く。
あったかくて、ふにゃふにゃで、か細い声で力いっぱい泣くあなたが、胸の中で安心したように穏やかな表情に変わっていく。
大丈夫だよ。お母さんがそばにいるよ。そう語りかけながら、頭を優しくなでる。
その横でお父さんが笑っている。
それがあなたが産まれた日。3人家族になった日。

あれから4ヶ月が経って、出生時から倍の体重になったあなた。寝返りができるようになったね。あっというまに上手になって、目が離せなくなってきたよ。
健やかに成長して、できることが増えていくのが何より嬉しい。
でも忘れないで。私も忘れないようにするよ。
何かができるから愛されるんじゃない。何ができてもできなくても、あなたを丸ごと愛してるってこと。
お父さんとお母さんにとって世界一の息子だよ。
産まれてきてくれてありがとう。愛してるよ。

 

東京都 溝渕淑子さん
題名:「愛してる」のはじまり
子どもへ伝えたい言葉:「愛してるよ。どんなときも、あなたを理解・尊重・応援するから、自分らしく人生を思いっきり楽しんでね。」