ちょこさん「10年後のあなたへ。」 | 第1回ぐるっとママ懸賞作文

「私の出産」~母から子へ伝えたい言葉~

第1回ぐるっとママ懸賞作文

ちょこさん「10年後のあなたへ。」

『10年後。どんな暮らしの中で、これを読んでいるんだろう』


あなたが2歳の誕生日に、この文章を書いている。書きながら、この話を10歳のあなたにすべきか、まだ迷っている。でも、やっぱり、大人になっていくあなたに伝えたいと思って、書いてみている。

一番伝えたいのは、わたしに、違う世界と景色を見せてくれて、ありがとうってこと。そして、あなたは生きる気力を失っていた私を、この世に留めてくれた存在だよってこと。

生まれる前から、わたしの体調は不安定で、生まれて1~2年は本当に本当に、大変だった。病気になってしまった私は、自分の境遇を嘆いてばかりいた。あんまり、あなたに構う余裕もなかった。あっちこっちに預けては、「これでいいのかなぁ?」「おかあさん、できているかなぁ?」と後悔と諦めの気持ちにまみれて過ごしていたんだ。

今まで「努力すれば、なんとかなる」「自己責任」が芸風の仕事の世界にいた私には、子どもとの暮らしが、なじめなかった。なじめないにも関わらず「これが母というものなのだ」「みんな苦労しているから」なんて幻想を抱えてふんばっていたら、余計に体調をくずしてしまった。

最初はうまく受け入れられなかったけど、一日また一日と、なんとか、生き残るのに必死だった。

ごくちいさいころから、あっちこっちに預けられていたからかな。ニコニコ笑顔が印象的で、愛嬌がいいあなたは、どこにいっても「かわいがってもらえる」術を身につけてきたような気がする。大きく暮らしが変わっても、すぐに順応する。新しいお友達と、その場ですぐに関係性をつくりあげる。あなたの生きる力の強さに、圧倒された。

自分は親なのだし……とあなたをなんとか生かそうしているとばかり思っていたけど、振り返れば、わたしのほうが生かされているのかもしれないと思っている。

あなたが生まれる前に考えていた、ドラマに出てくるような「しあわせのかたち」と現実がずいぶん違うことに戸惑った。ごくちいさいあなたを抱えて、右往左往して、生き方を大きく変えるのが身を引き裂かれるほどつらいと思ったこともあった。

でも、夜寝る前に「カメカメカメー-♪」「チコチコチコー♪」といっしょにうたったり、お風呂上りの牛乳をいっしょに飲んで「おいちいねー」と言われたりするうちに、少しずつ、自分の「しあわせのかたち」が変わっていくことを感じた。

じっくり変わっていく中で、自分の限界値と、現在地を強く意識するようになった。なにはできて、なにはできないのか。どんな状態なら、できるのか。見定めるのは、前よりもうまくできるようになった気がする。

生き方は、変わった。規則正しく寝て起きる暮らし。大事なものと、そうでもないものを仕分ける暮らし。

あなたがまだ2歳の時点では、正直にいって不安定さも抱える暮らしは、10年後、どこにたどり着いているのかわからないけれど。

それもまた、ひとつの在り方だなと思える暮らし。

願わくば、これを読んでいる10年後。あなたも、わたしも、もっともっと笑顔が増えているといいなぁ。

 

神奈川県 ちょこさん
題名:10年後のあなたへ。
子どもへ伝えたい言葉:10年後。どんな暮らしの中で、これを読んでいるんだろう