松田ひとみさん「 大切なあなたへ。」 | 第1回ぐるっとママ懸賞作文

「私の出産」~母から子へ伝えたい言葉~

第1回ぐるっとママ懸賞作文

松田ひとみさん「 大切なあなたへ。」

『無事に産まれてきてくれただけで、一生分の親孝行をしてもらいました。』
 

昨年2021年の4月21日にあなたは生まれました。

はじめまして。という気持ちと、おかえり。という気持ちであなたの小さなふわふわな手を握りました。
生きて会えた事に心からありがとう。生きて、会えた。

2020年の5月、妊娠6ヶ月の安定期を過ぎてからの後期流産を経験しました。
先にお腹に来てくれた、あなたのお兄ちゃんを見送りました。
産まれたばかりのお兄ちゃんは、靴箱くらいの箱に入っていて、抱っこすることも出来なかったけど、何かお母さんらしいことがしたくて持ってきた絵本を必死で読みました。


ほどなくして、来てくれたあなた。
でもあなたを授かったことをほとんど誰にも報告が出来ずにいました。

人生で経験したことがない位たくさん泣いた分、あなたが来てくれたことが本当に嬉しかった。
でもまた同じ事が起きたら思うと怖くて怖くて、どうにかなりそうでした。
人生にはコントロール出来る事とどうしてもコントロール出来ない事がある。
人生で最もつらい経験から学ばせてもらったこと、そしてこれから出来る事をいつもの私らしくやろうと思った時に少し前向きになってきて、

毎晩、「今日も無事に生きててくれて本当にありがとう。明日もどうか一緒に生きてくれますように」とお腹のあなたに声をかけて、祈りながら10ヶ月をすごしました。

妊婦健診の前には緊張で足が震えて、前回の記憶がよみがえってきて泣きそうになりました。
そのたびに、『私はこの子を信じる!この子は絶対絶対無事に生まれてくる!』と書いたメモを読んで心を落ちつかせながら
毎回エコーに映る、力強く動くあなたの姿にほっとして勇気つけられました。


4月21日の朝、陣痛が始まって病院に入院。
ずっと順調だったのに、なかなかお産がすすまず、夜の20時ごろに、担当の先生から『赤ちゃんの回転がとまってしまいました。回旋異常です。このままだと赤ちゃんが弱ってしまうので、緊急帝王切開をします』と告げられました。
たくさんの先生や看護師さんがあなたを助けるために動いてくれました。

そして、キラキラした涙をポロッと流しながら私に手を伸ばしてくる、あなたと会うことができました。

本当はあなたをもっと抱っこしながら感動でわんわん泣きたかったけど、回旋異常からの帝王切開で半分気を失い、あなたも直ぐにNICUに。
ほんの一瞬だけ握った小さな手。命懸けで私の元に産まれてきてくれたと思いました。


前回の妊娠から今回の出産までずっと担当し支えて下さった主治医の先生がいます。

緊急帝王切開が決まり、不安に押しつぶされそうな私に、『この10ヶ月誰よりも赤ちゃんの心配してたのはお母さん、あなただったでしょ。赤ちゃんの命を最優先しましょう』と当日も緊急オペをしてくださいました。
なんとまあ、あなたはその先生と同じ誕生日に生まれました。

産んでもらっただけで親には一生返せない恩がある、という言葉があるそうですが、
無事に私の元に生まれてきてくれただけで、あなたには一生分の恩返しをしてもらった気がします。
そしてあなたの前に来てくれたあなたのお兄ちゃんにも、一生かけても得られない大切な事をたくさん教えてもらいました。

そして今、目の前で眠るあなたに。
今日も無事に生きててくれて本当にありがとう。
どうかこれからも無事に元気に大きくなっていきますように。
明日も一緒に笑って、過ごせますように

お母さんより

 

愛知県 松田 ひとみさん
題名:大切なあなたへ。
子どもへ伝えたい言葉:「無事に産まれてきてくれただけで、一生分の親孝行をしてもらいました。」