金後葵美子さん「8歳になったきみへ」 | 第1回ぐるっとママ懸賞作文

「私の出産」~母から子へ伝えたい言葉~

第1回ぐるっとママ懸賞作文

金後葵美子さん「8歳になったきみへ」

『お母さんを選んでくれてありがとう』
 

東京で生まれ育った母ちゃんと、広島で生まれ育った父ちゃんは、東京の会社で出会いました。
母ちゃんから声をかけて始まった交際。4年間の交際を経て、東日本大震災のあった2011年に広島へ引っ越し、そして結婚しました。

しばらくは、母ちゃんもお仕事をしました。
そして2年経った頃に「そろそろ赤ちゃんを迎えよう」と父ちゃんと話して妊活を始めましたが、その頃の母ちゃんはお仕事で帰りが遅く、体の調子がよくなかったのもあって、なかなか赤ちゃんが来てくれませんでした。

そこで父ちゃんと話し合ってお仕事を辞めると、3ヶ月後に赤ちゃんがお腹にいることが分かりました。
それが彩華、あなたです。エコーに映ったあなたを見たら本当に嬉しくて、父ちゃんにも直ぐに報告しました。

初めはつわりで気持ち悪さもありましたが、父ちゃんの協力もあって無事に出産の日を迎えることができました。

ちょうど日付が変わる夜中にお腹の痛みを感じ、痛みの間隔が5分くらいだったので直ぐに病院へ連絡しました。
その時は、母ちゃんはババのお家でお世話になってて、父ちゃんは西条の自宅にいたので、直ぐに父ちゃんへ電話してババの家に来るようお願いしました。
それから父ちゃんと車で病院へ行きましたが、お腹が痛くて受付へ歩くのもやっとでした。

初めは順調に開いていた子宮口も、最後の1センチがなかなか開かず、母ちゃんはあまりのお腹の痛さに泣き叫びました。
その声が病院中に響いていたようで、翌日噂されてるのを耳にしてちょっと恥ずかしかったです。
父ちゃんもどうしたら良いか分からず、看護師さんに言われるまま母ちゃんの背中をさすってました。

夜中に始まった陣痛も気づけばお昼。
ようやく分娩室へ移動したものの、なかなか彩華は出て来なくて、母ちゃんも体力をかなり消耗していました。

最後は助産師さんにお腹を押され、やっと彩華が出てきました。
小さな小さな彩華が腕の中に来た時は、無事に生まれてくれことにホッとしました。
父ちゃんも、差し出した指を彩華が握ってくれたことに感動して、涙が出たと言っていました。

彩華の名前は、父ちゃんと母ちゃんの2人で考えました。
彩のある華やかな人生を歩んでほしい、そんな願いを込めました。

もうとにかく可愛くて可愛くて。
父ちゃんが引くくらい、母ちゃんは彩華を可愛がりました。

ですが、昼間はたくさん寝るのに、夜はずっと起きていた彩華。母ちゃんは睡眠不足でとても辛かったです。
本当は可愛くて、とっても大切で大好きなのに、なかなか泣き止まないあなたに何もしてあげられない自分が情けなくて、不甲斐なくて。

ある日、泣いているあなたの顔を見て、ついに小さなあなたのほっぺを叩いてしまいました。
それから母ちゃんは、あなたが泣くと叩くようになってしまいました。
時には顔や体にアザができることもありました。

父ちゃんは「このままでは家族が危ない」と思い、母ちゃんを助けるために料理をするようになりました。
初めて作ってくれたのが、週末のお昼のチャーハン。それから段々と料理の腕が上がって、今では何でも上手に作ってくれます。

父ちゃんに感謝です。
母ちゃんもこのままではダメだと思って、色んな勉強をしました。

痛い思いをさせて、怖い思いをさせて本当にごめんね。
母ちゃんは、何度も母ちゃんを止めたいと思いました。
もっと優しくてあなたを大切にしてくれる人に育ててもらった方が良いとも思いました。

でも、できなかった。
あなたの屈託のない笑顔、すやすやと眠る姿を見ると、あなたとずっと一緒にいたい、最後まで成長をしっかり見届けたい、そう思い直して、今日まで母ちゃんを続けることができてます。

母ちゃんを選んで生まれてきてくれてありがとう。
いつも助けてくれてありがとう。
これからもずっと母ちゃんでいさせてください。

心より愛する娘へ、母より。

 

広島県 金後葵美子さん
題名:8歳になったきみへ
子どもへ伝えたい言葉:「お母さんを選んでくれてありがとう」