F.Kさん「30年前帝王切開で生まれた娘に渡した手紙」 | 第1回ぐるっとママ懸賞作文

「私の出産」~母から子へ伝えたい言葉~

第1回ぐるっとママ懸賞作文

F.Kさん「30年前帝王切開で生まれた娘に渡した手紙」

『30年前に私の母からもらった手紙。大切な私の御守りです。同じく帝王切開で生まれた私の娘(一歳、母にとっては初孫)大きくなったら一緒に読みたいです。』
 

ひとみへ

最近、背も随分高くなって、あと少しでお母さんを追い越してしまいそうだね。
時々、口のきき方が乱暴になったりして、けんかもするけれど、ひとみなりに成長してきた証拠だとお母さんはいつも思っています。
(そう思っているのだけど、なかなかうまく言ってあげられなくてごめんね)

今回、先生方が良い機会を作って下さったので、ひとみの産まれた時の事を話します。
今まででも一緒にお風呂に入りながら話してあげたこともあるのでおおよその事はわかっていると思います。

ひとみがお母さんのおなかに宿ったことがわかってから、ずっと順調で、近くの病院にかかっていました。
マタニティ体操やマタニティスイミングをしたりしながら、ひとみが産まれてくるのをずっと楽しみに待っていました。
もちろん、お父さんも、おじいちゃん、おばあちゃん達もそうです。

ところが8ヶ月になったばかりの10月24日の早朝、お母さんは突然お腹が痛くなり、大出血をして、すぐに病院に行きました。
病院の先生は、はじめ、『出血多量なので輸血をしながら、お産をして赤ちゃんだけ更生病院へ送ります』と言っていました。
更生病院には小さく生まれた赤ちゃんのための設備〝新生児・未熟児センター″があるからです。

ところが、血液センターに連絡したところ、1時間後でないと、名古屋から血液を届けられないとのことでした。
血液が間に合わないので、お母さんは救急車で更生病院へ運ばれることになりました。

更生病院についたのは、まだ病院の朝の診察開始前でした。
大勢の先生や看護師さんが大急ぎでお母さんを診察して手術の準備をしてくれているのをうっすらと覚えています。
先生に『おなかの赤ちゃんが弱ってきているので、すぐに手術をして、赤ちゃんを助けます』と言われました。
帝王切開です。

こうして先生に取り上げられた赤ちゃんが、ひとみ、、あなたです。

10月24日9時40分、仮死状態でした。

手術室の中では、小児科の先生が、すぐ側に待機していて、小さなあなたを手でかかえて、手術室から階下の未熟児センターの保育室へ運んでくれました。
身長40cm.体重1.898g. 小さな小さな赤ちゃんでした。

本当に多くの人達に、お母さんとひとみは助けてもらったのです。

後で分かった事ですが、お母さんは〝前置胎盤″といって胎盤の位置が悪かったのだそうです。
もしあの時、血液が間に合っていたら、輸血をしながら近くの病院で産んでいたら、、
お母さんもあなたも生きていなかったかもしれません。
もし仮に生きていたとしても重い障害が残っていたかもしれません。

ひとみ、あなたは本当に運の強い子だと思いました。

仮死未熟児として生まれてから、その後1年半、心臓、脳、目などの色々な検査をして異常がないか調べてもらいました。
多くの先生方に御世話になりました。
そして本当に嬉しいことにどこにも異常がなく、元気いっぱいに育ちました。
それが今のあなたです。

ひとみ、これだけは忘れないでほしい。
あなたは本当にまわりの多くの人たちに助けられたのだということを。

お母さんもあなたも、これからも感謝の気持ちを忘れないようにしようね。

小学校生活ももうすぐ終わり、いよいよ中学生だね。
これからもいろいろな事があると思うけれど、ひとみのまわりにはやさしい友達、先生、そしてあなたの事をとても大切に思っている家族がいることを忘れないで、、。

頑張ってね。いつも応援しています。

お母さんより。

 

愛知県 F.Kさん
題名:30年前帝王切開で生まれた娘に渡した手紙
子どもへ伝えたい言葉:「30年前に私の母からもらった手紙。大切な私の御守りです。同じく帝王切開で生まれた私の娘(一歳、母にとっては初孫)大きくなったら一緒に読みたいです。」