くきゆみさん「絶対に大丈夫」 | 第1回ぐるっとママ懸賞作文

「私の出産」~母から子へ伝えたい言葉~

第1回ぐるっとママ懸賞作文

くきゆみさん「絶対に大丈夫」

『きみは必ず力強く楽しく人生を進んでいける。その力を感じた誕生の日のこと。』
 

誕生の日、きみがどんなに輝かしい命の力を見せてくれたか、お話しさせてね。

初めての出産。
先生に「ちょっと大きめかな」と言われていた赤ちゃん。
予定日を過ぎても、陣痛の気配がなく、入院して促進剤を打つことになった。

だんだん強くなる陣痛。
助産師さんや付き添いの家族に支えられ、痛みというより苦しさと闘い始めたが、なかなか子宮口が開かない。
振り返れば、私にまだ心構えがなく、赤ちゃんが出てくる気にならなかったのではと思える。
まな板の上の鯉とでも言おうか、ベッドの上の妊婦、医療にすべてを委ねていたような感覚。
勝手に動いちゃいけない気がしていた。

しかし点滴を始めてからおよそ8時間、「起き上がりたい」と衝動に駆られ、椅子を借りて座る体勢を取った。
おそらくここで初めて、私の主体的な出産スイッチが入ったんだと思う。
やっとお産が進む感覚が得られた。
破水を経て分娩室に移動すると、自分では呼吸の浅さはわからなかったが、赤ちゃんも苦しくなってしまうと言われるので、途中、酸素マスクをつけてもらって必死で息をした。

そうしてきみは元気に生まれてきてくれた。

科学的にはどうかわからないけどね、のんびり者のお母さんに付き合って、お父さんが立ち会いできる日までしっかり待って出てきてくれたんだって思っているよ。
お父さんもたくさん「がんばれ!」と応援してくれたんだよ。

きみの産声を聞いて、姿が見えたときに思ったことはね、「あら、大きい」ってこと。
想像よりもずっとたくましい姿で出てきた。
出生体重は、3,678g。
お腹の中でも、しっかり育ったね。
右、左と首を動かして、まるで「ここはどこ?」と、慎重に確認しているみたいに見えたよ。
そんな視力も意思もまだ無いらしいけど、この世界を見極めて生きていく、そんな力を感じずにはいられなかった。

病院に駆けつけたおばあちゃんや、おじいちゃんたちは、みんな本当に幸せな気持ちだった。
ニコニコしてきみを眺めたよ。

大きめの耳のおかげで、新生児室の窓越し、コットの中で顔が見えなくても見分けられたよ。
泣き声は隣の部屋の赤ちゃんよりも高くて、とてもかわいいと思った。
次々に病院に会いにきた親戚たちには、よく「しっかりしてる」「賢そう」と言われたよ。
きみの生まれた姿はきみだけの最高の形。
そして、会う人を心からの笑顔にした、素晴らしい命の輝き。

お母さんが伝えたいことはね、こんなに力強く生まれてきたきみは絶対に、好きな人生を望むように生きていけるっていうことだよ。
もちろん、人生には良くないことも起きる。
身体つきがしっかりしていて、検査でも何も心配事がなくて、私はその幸運に心から感謝したけれど、これから先、病気や怪我をすることもあるかもしれない。
きみにはそれを乗り越えたり、うまくつきあって、命をまっとうする力が必ずあるよ。

心が辛くなるときもあるね。
悔やみきれない失敗をしたり、自分がちっぽけで惨めな存在に思える日もあるかもしれない。
それでも、あんなに存在感を放っていたきみは、絶対に楽しく価値ある人生を生きていけるよ。

「親の言うことなんて信じられない」って思うかな。
うーん、たしかに身内贔屓な気持ちは否定できないか。
だけどさ、人間が生まれてくるってやっぱりすごいこと。
その生まれたときを、いちばん近くで感じていたから、これくらい断言できるって信じているんだ。

きみには素晴らしい力がある。絶対に大丈夫。

 

神奈川県 くきゆみさん
題名:絶対に大丈夫
子どもへ伝えたい言葉:「きみは必ず力強く楽しく人生を進んでいける。その力を感じた誕生の日のこと。」