岸千尋さん「大絶叫の中のありがとう」 | 第1回ぐるっとママ懸賞作文

「私の出産」~母から子へ伝えたい言葉~

第1回ぐるっとママ懸賞作文

岸千尋さん「大絶叫の中のありがとう」

『あなたが生まれてきてくれたから、お母さんは心からありがとうが伝えられました。』
 

幼稚園で働いていた20代。

毎月のイベントでお誕生日会があり、子どもたちは自分の誕生月を楽しみに待っている。
お誕生日会当日の子ども達は、髪型を可愛くしてもらったり、はにかむような表情をみせてくれたり、その一つ一つの姿がとっても可愛くて、私も毎月楽しみだった。

おめでとう!ありがとう!が飛び交う日。
でも、本当にありがとうを伝える相手は…?と、職員間で話し合った時、お家の方を1日招待し大切な日を一緒に過ごしてもらおう!となった。
そして、お子さんの好きなところ、生まれてきたときのこと、名前の由来など、みんなの前でお話ししてもらおうと。

生まれてきてくれてありがとう。
産んでくれてありがとう。

この時間がとてもあたたかく、時にみんなで涙を流したことを現場を離れた今でも思い出します。
 
当時の私は、まだ独身でお母さんってすごい!こんなに一人一人のエピソードが300人近く…と、圧倒されるばかりでした。
将来の自分はどうなるんだろう?
そんなことを考えていました。
教え子たちに【お家の方にありがとうを!】と伝えているくせに、肝心な私は恥ずかしくて言えずにいました。
 
そんな私も7年前、長男を迎えることに。

陣痛が始まった。と連絡すると、両親が駆けつけてくれました。
分娩台に移動する際にお母さんもどうぞ〜!と母も、急遽立ち会ってもらうことに!!!

子宮口最大で分娩台に乗ったので
もうお願い〜!痛い〜!辛い〜!産むのやめる〜!一回休みたい〜!と、苦しく、もがき弱音を吐きながら涙を流していると、しっかり!と母が手を握ってくれました。
その手があたたかく、どれだけのパワーが伝わってきたか!!

おかーさーん!
母になる直前に、おかーさーん!と叫ぶ私。

陣痛の間の息継ぎしている間に途切れつつも
お母さんも
こんなに大変だったのーー??
と絶叫しながら聞くと
 
母は涙目で、そうだよ!!
3回も味わったんだから!!の答え。
 
こんなに苦しい中、産んでくれたんだ!と思ったら、その時に改めて実感し、お母さん!ありがとうーーー!!と叫びながら、私はお母さんになりました。

両親がいたから、今の私がいる。
大変な思いをして産んでくれた母と、厳しくもいつも遊んでくれていた父を思うと、自分を大切にしようと思えます。

子どもたちを大切に育てようと強くなれた初めての日でした。

お母さんにしてくれてありがとう。
生まれてきてくれてありがとう。
大切な気持ちを教えてくれてありがとう。

そして来春、母と同じように3人目の出産に挑みます。

 

神奈川県 岸千尋さん
題名:大絶叫の中のありがとう
子どもへ伝えたい言葉:「あなたが生まれてきてくれたから、お母さんは心からありがとうが伝えられました。」