前田祐子さん「あなたが生まれるまでの36時間」 | 第1回ぐるっとママ懸賞作文

「私の出産」~母から子へ伝えたい言葉~

第1回ぐるっとママ懸賞作文

前田祐子さん「あなたが生まれるまでの36時間」

『大きな危機を乗り越えて。元気に生まれてくれてありがとう。』
 

大きくなったあなたへ。
今日はあなたが生まれた時の話をします。

あなたがお腹にやってきたのは、2017年の秋。
お母さんとお父さんが結婚してから8年目、赤ちゃんを授かるために病院に通い始めてから6年が経った頃でした。

あなたがお腹にいるとわかった時、すごく嬉しかったけれど、無事に生まれてくるか不安で仕方ありませんでした。
そんな不安とは裏腹にあなたはお腹の中ですくすく育ち、いつも病院の先生に「元気な赤ちゃんですね」と言われていました。

標準よりも少し大きめに育っていたあなた。
早く生まれないと、難産になっちゃうかも!そう思っていた出産予定日一週間前、7月16日の未明。
なんだかお腹がギューッとされているように痛い。少しずつ赤ちゃんがお腹から出る時に起こる痛み、そう陣痛が始まったのです。

そこからは痛みとの戦い。
それでもなかなか本格的な陣痛にはならず、痛いけれどすぐ 終わってしまったり、痛いけれど間隔が長ーく空いてしまったり。

そして一日が終わり迎えた夜、それまでの痛みとは比べ物にならないほどのお腹の痛みが波のように襲ってきました。
隣ですやすや寝ているお父さんに助けを求める余裕もないままに、ひたすらベッドで痛みに耐えること一晩。
一睡もでき ないままに迎えた早朝、病院へ。そろそろ生まれるかも!とそのまま入院し、痛みに耐えながらその時を待ちました。

お母さんはその時思っていました。
「もう病院に着いたし、一安心。お産も進んでいるし、後は生むだけ!」その後に起こること など、考えもせずに。

病院に着いて4時間ほど経った頃でした。
さぁいよいよ産まれる、と分娩台へ移動。するとなんだか痛みが弱まってき たような感覚が。
そして赤ちゃんの心拍を測る機械から、けたたましい音が。
急に周りがバタバタし始めて、お医者さんもやってきました。

「大変です。陣痛が弱まって、赤ちゃんが苦しい状況です。羊水も濁ってしまっていて、このままでは赤ちゃんが危険です 。」

「陣痛促進剤を使ってお産を進めます。それでもうまく進まなかったら、緊急で帝王切開に切り替えます。」

突然陣痛を起こす点滴が始まり、お母さんは大混乱。
点滴が効いて陣痛が起きたら、いきんで赤ちゃんを出さなければ いけないに、パニック状態でどうやって力を入れたらいいのかわかりません。

気がついたら、その時病院にいた3人のお医者さん全員が周りに集まっていました。
一人は上からお腹を押し、一人は機械で赤ちゃんをひっぱり、一人は陣痛に合わせて「いきんでー!」と指示をする、30分前には想像もしていなかった状況が繰り広げられていました。
ちなみにお父さんもその場に立ち会っていましたが、できることはなくただただ祈るだけだったとのこと。 

何度いきんでもなかなか出てこず、この陣痛の波で産まれなかったら帝王切開に切り替えるという最後のチャンス、その時。
やっと何かが出てくる感覚がして、赤ちゃんを出そうと力いっぱいいきみました。

すると...「頭が出ましたよー!」助産師さんが大きな声で教えてくれました。
下を見るとあなたの頭が見えて、すぐに元気な泣き声が。 お母さんは思わず泣いていました。

あぁ、無事に生まれてくれたんだなぁ。苦しい中でも頑張ってくれたんだなぁ。
そしてお医者さん、助産師さん、看護師さん、沢山の方々に助けられてあなたを生むことができたんだなぁ。 

その後処置を終えたあなたは、お母さんの胸元にやってきました。
あなたを抱いた時、今まで生きてきた中で一番温かく幸せな気持ちになったことを昨日のことのように覚えています。 

7月17日の13時19分、あなたは大きな危機を乗り越えてお父さんとお母さんの元にやってきました。

振り返ると、あなたが今ここにいる、それだけで奇跡なのだと思います。
元気に産まれてくれてありがとう。
そして、今日も元気でいてくれて本当にありがとう。

 

神奈川県 前田祐子さん
題名:あなたが生まれるまでの36時間
子どもへ伝えたい言葉:「大きな危機を乗り越えて。元気に生まれてくれてありがとう。」